
アニエスベーに行こう。
そう誘ってくれた男友だちがいました。三十年も前のこと。
そのときわたしはまだアニエスベーの存在を知りませんでした。
アニエス、ビーと英語で読んでいたら、その友だちに、フランス語読みだからアニエスベーだよ!と笑われたものでした。
買い物に行こうなんて男の子に提案された最初の出来事に、意味不明なままお財布を握りしめ出かけました。
それにも増して嬉しそうな友達はフランス帰りの新米シェフ。
アニエスベーに入るなり、彼は涙目になっていました。
懐かしいのかな、とまた意味不明なままわたしはボーダーのシャツに惹かれます。
これは映画「勝手にしやがれ」でアニエスがスタイリングしたTシャツだよ。と鼻水をすすりながら店を案内する友達…
じゃあこれは?豹のハラコのポシェットを手に取りました。
豹を清楚に身に着けるなら、それはパリジェンヌだよと友達に睨まれましたっけ。
結局それからわたしは毎年5月になるとアニエスベーで買い物に行くのです。
それは、買い物というより、濁らないおしゃれのためかもしれません。
いつまでも自由闊達な気持ちで服に出会いたい。
そう思うとアニエスベーに行きたくなるのです。
そうそう、そのときの買い物友達は、次の週に、ケンゾーにいくからと、また買い物に連れて行ってくれましたが、
その理由が、パリのファッションを伝えたいんだよぉおお、とかで、いらいらしていましたね。わたしたち東京がまだ、黒づくめな服装でしたから!
なにもなかった時代、いろんな服を着たいから出歩くというほんとうに楽しい買い物をした。
服にも出来事としてのそんな思い出があるといいです。
若いときに、自分のセンスが決まらないうち、いろんなセンスのヒトと交わるように遊べるとその後が楽しくなる。
センスなんてみえないものに、
それが光のように感じるなら、
どうかそれを持つヒトをそばに置いて付き合ってください。
学ぶように、
見習うように、
しずかにそれは身に付きます。
わたしは未だに、アニエスベーというフランス女性でとびきり年上のデザイナーに、
素数のようなファションセンスを組んでもらっている気持ち。
素数って、何才でも着れる服でありながら時代が動いていくのを着られるデザインって感じでしょうか・・・
そう感じてお店に出向きます。
agnès b.